恋の訪れ
結局思い出せなかった。
こうやって学校に行く途中もずーっと思いだしていたけれど、全然記憶がなくて、
「あー、莉音ちゃん!!」
正門に差しかかった時、明るく弾けたその声に身体がビクンとした。
そして恐る恐る振り返ると、そこには――…
「…あ。サクヤ先輩でしたっけ?」
「そうそう」
そこには昨日いた派手なサクヤ先輩だった。
相変わらず茶色か金だか分かんない髪に着崩した制服の先輩に顔が引きつる。
「おはようございます」
「…はよ。ところでさ、昨日ヤっちゃった?」
そう言った先輩はここぞとばかりにニコニコしてあたしの顔を覗き込む。
その顔にあたしは恐怖の様に怯えてしまった。
この異様な明るさはなんですか?
「ヤった…とは?」
「だーかーらー、セックスに決まってんじゃん。昴すっげぇ上手いっしょ?」
「はっ!?」
思わず声を上げてしまった。
そしてあたしは慌てて周りを見てしっまった。
案の定、周りの視線がこっちに向いて来る。
なに、言ってんの?
この人。
「あれ?昴としてねぇの?セックス…」
どーしてもそこを強調したいサクヤ先輩は更にあたしの顔を覗き込む。
「やってません!!って言うか、何でそーなるのですか?」
何を言ってんだ、この先輩!!と、思いつつ、あたしは強めに言葉を返した。