綿菓子と唐辛子


…緊張が走った。

これまで、こんなに緊張したことがあったかと思うほどだった。

ひょっとしたら、ヒメに告白したり抱きしめたりした時に匹敵するのではないかと思われるほど。



「…じゃあ、かける」

「おう、がんばれ」



…見慣れない番号を目で追いながら、慎重にボタンを押した。


その時間は、とてもとても長く感じた。

気がついたら、手汗だってたくさんかいていて。



「…っ」



ゴクリ、と、唾を飲み込む音まで鮮明に聞こえていた。



「…」



通話ボタンを押す。その時の手が、1番震えていたと思う。



『プルルルル…』


ワンコール目。


『プルルルル…』


ツーコール目。


『プルルルル………ガチャッ』


「…!!」



…出た。

その、受話器をとった音から、声が聞こえてくるまでの間が、ほんとうにほんとうに長く感じた。

たった、一瞬のことなのに。



「…はい、相坂です」



この間まで、すぐ隣で聞いていた声が、ものすごく、ものすごく、ものすごく久しぶりにも感じた。




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