綿菓子と唐辛子
当たり前のように、ヒメの家の鍵であろうものを取り出して、ガチャリとドアを開ける本郷。
…なんで、こいつがこんなに当たり前に。
カタチにならない苛立ちが募っていく。
「荷物置いたら、近くに喫茶店があるんで、そこに行きましょう」
「…」
「姫芽の、話をします」
中に入ると、綺麗に掃除してある部屋が数部屋見えた。
母親と二人暮らしをしていたのだろうが、母親の姿は見当たらなかった。
…二人で、どこか出かけているのか。
客間に使っているのであろう、広い部屋に荷物を置いて、あたりを見渡した。
「…ヒメのものが、ない」
何ひとつ、なかった。
ヒメの部屋もなければ、今まで住んでいたのなら残っていてもおかしくない、私物のアレコレもなくて。
本当にヒメはここに住んでいたのかと思われるほど。