綿菓子と唐辛子
「荷物、置きましたか」
「はい…」
「じゃ、行きましょう」
…どうして、俺は、1番守らなきゃいけない立場なのに、こんなところで言われるがままに動いているんだろう。
ヒメが今どこにいるのか、何をしているのかさえ、強く聞き出せなくて。
目の前の男の言う通りに、動くしかなくて。
「はぁ…」
本当に、情けなくなるというか。
*
本郷に連れられて入ったのは、ヒメのマンションから5分くらい歩いたところにある、喫茶店だった。
「ここです。ご飯も美味しいんで、お腹すいてたら食べてみてください」
「…」
特にお客がいるわけでもなかったけど、歴史ある古風な雰囲気を醸し出すそこは、きっと長年、近所の人たちに愛されてきたのだろう。
マスターらしき人がお辞儀をした。
それにつられてお辞儀をして、そのまま奥のテーブルに座った。