綿菓子と唐辛子
よいしょ、と、一声あげて座る本郷。
それの斜め向かい側に、俺は座った。
「何を飲みますか?」と、普通に聞いてくる本郷に少し戸惑いを感じて。
小さく、アイスコーヒーと答えた。
「…」
「…」
店員を呼んで注文をすると、再び沈黙。
…だれか、このいたたまれない空気を止めてくれ…。
「あ、そうそう、そうだ。姫芽のことを話さなきゃだったんですよね」
「…!」
スマホを触りながら、注文したコーヒーラテをふた口含んだあと、本郷は思い出したように手を叩いた。
…いや、なんのために俺らはここにいるんだよっていう。
「すみません。ここに来ると、なごんじゃって」
「…」
ハハハと、空気混じりに笑う本郷。
でも、俺にとっては全く笑えず。
早く、話してほしいと思ってしまう。
「…それで、話ってなんですか」
「ー…」
俺は、別にこんな男とお茶を飲みにわざわざ来たんじゃない。
ヒメのことを、助けたくて来たんだ。