プラチナブルーの夏
17.
その瞬間。
 
金縛りが解けたかのようにあたしの足は瞬時に動き、小汚いソイツの腹を

ベンチもろとも思いっきり蹴り飛ばし、一気に走り出した。

「あ~~お嬢ちゃ~ん!忘れ物、忘れ物!!」
 
バカなあたしはその言葉を聞き、反射的に振り返ってしまった。

「またねぇぇ~~~」
 
ソイツは倒れたままのベンチの脇に立ち、ズボンのチャックから下半身を露出していた。
 
その上さらにソコに手を添えて、フルフルと動かして見せていた。

(…………っ!!)
 
最低……最悪だ!!!アイツに触られた腕を、一刻も早く洗いたい!!

全速力で走り続けながら、涙が止め処なく溢れて来た。
 
どうしてこんな目に、遭わなきゃいけないの?


『色気づいちゃって』『エッチなカラダだねぇ…』
 

どこまで逃げても母親とアイツの声が、耳の奥に渦巻いて離れない。

(誰か…誰か助けて!!リツコ……リツコ……!!)
 
いつもみたいに全部を笑い飛ばして。ココロから安心出来る、あのチェシャ・スマイルを見せて。
 
道端にしゃがみ込んだあたしを、道行く人々が怪訝そうに一瞥していく。
 
ついに耐え切れなくなったあたしは、リツコに電話をかけてしまった。
< 24 / 118 >

この作品をシェア

pagetop