プラチナブルーの夏
すっかり弱りきってしまっていたあたしは、リツコに何一つ今日の経緯を説明しないまま、

「…今からリツコの家に泊まりに行っても、いい?」
 
まだ小刻みに震える手で携帯をギュッと握り締めたまま、たったそれだけを伝えた。

「…え、何?…なんか、あったん……?」
 
リツコは寝起きのような、普段よりも小さく低いトーンの声で言った。
 
しかし、その時のあたしには、それを気にするような余裕など、どこにもなかった。
 
「うん…訳は、後で話すから……。とにかく、一人でいたくないの。

家にも…帰りたくないの」

「…………………」

長い、沈黙。
 
今頃になって、全速力で走った汗が次々と流れ出す。

携帯を持つ手もヌルヌルと滑り、何もかもが不快な状態で、あたしは祈るようにリツコの次の言葉を待った。

「…えーよ。そしたら、家おいで」
 
リツコが答えた。
 
…応えて、くれた。

「ありがとう…あと…シャワーも借りて、いい?」

「うん。えーよ」

(………良かった………)
 
あたしは、そこでやっと安堵の溜息をこぼした。
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