アドラーキャット



和歌サークルの歴代の和歌研究本を読みふけっている祐介くんに近づく。

「ねぇ祐介くん。」

「なんですか瑞希先輩?」


本から顔を上げ祐介くんはきょとんとした顔をしている。
私が荻野目くんじゃなくて祐介くんに声をかけたことがそんなに珍しいのだろうか。
いや、でも今まさにその荻野目くんについて相談しようとしてたとこだし。

とりあえず、本題を言う前に取り留めない話をすることにした。

「祐介くんはさ、本当に和歌サークルで良かったの?」

「なんでですか?」

「いや、祐介くんは運動神経良かったし、バレーだって一年生でスタメンになるくらい上手だったじゃん。」

「いや、実際、俺よりも荻野目の方がうまかったですよ。」

「そうなの?」

「パワー面でみたらさすがに俺の方が勝ってるでしょうけど、あいつは観察力があるから。」

「へぇ。そうだったんだ。」

実際はあまり男子の練習風景を見なかったから荻野目くんと祐介くんがどのポジションだったのか分かっていないのだ。

「てか、先輩、荻野目となんかあったんですか?」

いきなり、祐介くんは核心をついてきた。
ぐ、と言葉に詰まる。
もう少し別の話をしていたかったけど、これはもう話してしまったほうがいいだろうか。


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