アドラーキャット


予想外だった。
荻野目くんがまさか私に好意を抱いているなんて。

「荻野目くんの気持ちは嘘じゃないとは思うんだけど、彼、もっとたくさんの女の子と話した方がいいと思うんだよね。」

「たくさんではないけど、あいつ一応女子とは話しますよ。」

「いやぁ、そうは言ってもさ、私以外の女の子とはコミュニケーションとる気もなさそうな時とかあるじゃん。」

もっとたくさんの人と話せば、きっと彼と相性がいい人が見つかると思う。
なにも私じゃなくたって。

多分荻野目くんは、たくさん話せる私のことを特別だと勘違いしているんじゃないだろうか。
たくさん接すれば接するほど情が湧く。

泡が噴き出す鍋を見ながらボンヤリとそんなことを思っていれば、祐介くんがポツリと呟く。

「先輩だから話すんじゃないですか?」

「……ん?」

よく分からないな。
私が理解出来ない顔をしているのも気に留めず、祐介くんは携帯を弄り続けている。


「まぁ、俺はアレですよ。荻野目の焚き付け役ですから。」

「……はぁ。」

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