和風シンデレラ 〜煙管を掲げて〜
舞や三味線を披露していた二、三人は
あたしらの横に座ってお酌をしたりしている。


「…えっと……」

短めの髪の毛を指で触りながら旦那様は俯いたあと
懐(ふところ)から何かを取り出した。


「カーノン様からのお手紙です。」

あたしはそれを黙って受け取り、
封筒に書かれていることを眺めた。


カーノン王…


月華屋冷羅様……


招待……





………招待!!?



目を見開いて驚いた顔をしているあたしを見て、旦那様がふっと笑った。


「王が君を城へ招待している。ぜひ来週の城の祭に、きてほしいとのことだ。」


来週…って言ったら、3年に一度、
カーノン王主催のお祭りがある。

滝檎の街で行われる一大イベントだ。


出店が何キロも並び、街が人でごった返す。


ピアノや三味線や他の楽器での演奏会や
綱渡りとかサーカスみたいなショーもある。
楽しい祭だ。

夜には花火も打ち上がる。

城では特別な者しか入れない夜のパーティーもある…らしい。


その日は月華屋もいつも以上に人が来るから、働きどきだと女将に言われる。


その祭で、城に…?



「滝檎一の花魁だから王が見られたいようで。」

笑顔で話す家来。

その顔を見たら、ドキドキしてしまう


『……あたくしなんかが、行ってもよろしいのでしょうか』

ものすごい小さい声で呟くように言った。

家来は一瞬驚いた顔をしたが
また笑顔を見せた。



「ぜひ。よろしければ太夫道中なんかも見たいところです。お祭りですし、きっとあなたを見たがる方がたくさんいらっしゃいますよ」



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