そしてキスからはじまった
診療を終えた私はプレイルームへ向かった。

外からの覗くと青さんの膝の上にはサラが恥ずかしそうに座っていた。帽子から出た髪を触りながら

いつも恥ずかしそうに私の後ろに隠れているのに…

似合う可愛いと言われて自信を持ったのかな?チラチラ前に立つ人を見ている

青さんのお客様?
スーツを着た男の人…そして男の人のかげになって…背の高い若い男の人だ。
...「紫音?」やっぱり彼は青さんの子供だったんだ。久しぶりに見る彼は素敵で見つめすぎたのかもしれない。
すぐに立ち去れば良かったのに

「どうしているの?」後ろから聞こえた苛立ったような声…

青さんは明日、退院だと言っていた。
青さんは検査入院で今まで誰もお見舞いにきてない
もし紫音が来るとしても退院手続きに明日、来るぐらい

お別れは今日言えばいい。明日は会えないからと言えばいいと安心していた

当たり前だ。彼女とお見舞いに来るなんて…少し考えれば分かるのに
私はなんて馬鹿なんだ。どんな顔をして彼に会えばいい?
どうしたらいいか分からず私は走り出した。

彼女はまだ何か怒鳴っている…恐い顔をして

そんな大きい声を出したら紫音に気づかれる…

あの角の階段を降りて早く外に出よう。セシリアに連絡したら来てくれるだろうか
そんなことを考えながら階段に降り始めた時
『ドン…』
誰かが後ろにぶつかった。
耳許で「あんたさえいなかったら」そう聞こえた。

どうすればいいの?このままでは宝物が死んでしまう。
階段から落ちながらお腹に手を当たるぐらいしか出来なかった。

ふっと愛しい人の香り、
耳元で「ジュリア…俺に抱きついて」
私はお腹に当てた手を彼の背中に回した。

そして彼のぬくもりと衝撃を感じ、人が騒ぐ声を聞きながら意識を手放した。




< 253 / 274 >

この作品をシェア

pagetop