最愛レプリカ

私はすぅっと息を吸って、速まり出した鼓動を抑える。


「何も用がないのに電話するのは嫌だから、今日はある女の子の話をするね。」

『どしたの、イキナリ。』


唐突な私の言葉に若干困惑している様子の津村。


「黙って聞いてて。ただ聞いていれば、いいから。」


津村は私に従うように黙った。

私はベッドに腰掛け、手触りの良い白いクッションを抱き抱える。

そして私たち家族の写真を飾った写真立てを、静かに伏せた。


「ある所に、一人の明るい女の子が居ました。」
< 60 / 113 >

この作品をシェア

pagetop