アカイ花†Vermilion Flower
病院の待合室、消毒の香りに清潔感漂うその場所で、私達は肩が触れ合う距離に座って黙ったまま名前を呼ばれる時を待っていた。
病院など窮屈で何の面白みも無い場所なのに、私は、いずるさんとのこのひと時を待ち焦がれていた。
「ミウラさん、どうぞ」
「はい」
その場に立ち上がる私の体を、サッと寄り添い支えてくれる、いずるさん。
彼に身を委ね歩く私は、もう彼無しではいられないぐらい甘やかされていた。
足の怪我以外は全て完治して、通院なんてする必要はもうないのに・・・
私はこうして、彼との時間を心から楽しんでいる。
そんな日々が続いた、ある夜・・・
電話越し、久しぶりに聞く浅緋の声。
「もしもし、リコ、ごめんな
お前のこと、事故以来
いずるに任せっきりで
アイツにも、ほんと悪い」