・*不器用な2人*・
第50章/退部
翌朝、学級閉鎖になるかならないかの職員会議がある為に、1限目は自習になってしまっていた。

「あー、もう最悪…」

めぐちゃんは朝から頭をかかえたままずっと机に突っ伏している。

「どうしたのあいつ」

淳君が雑誌から顔を上げて私を振り返る。

「昨日の放課後、木山君のネクタイを引っ掴んだら『殺す』って言われちゃったんだよね」

私の色々省いた説明に淳君は「は?」と間抜けにくちを開ける。

昨日のことを一から説明すると、面倒そうに聞いて納得はしてくれた。

「災難だったな、あいつも」

最後の方は苦虫をかみつぶしたような顔で聞いていた淳君も、最後の木山君の下りではめぐちゃんにすっかり同情していた。

マネージャーをしていたとは言え、木山君のあのことを察する機会は1度もなかったらしい。

攻撃されると分からなければ触れられることも大丈夫、という曖昧な基準。それは木山君の気分次第で変わってしまうものだ。

私だってそのラインを未だに分からずにいた。



2限目、結局私たちのクラスは相も変わらず出席数が多いお陰で学級閉鎖にはならなかったものの、当の先生がインフルエンザにかかってしまったらしく、体育は中止になった。

教室で2時間連続自習というのもつまらないからと、代わりに来た先生がグラウンドでドッジボールをしようと提案した。

Dクラスも学級閉鎖を生き残ってしまったものの担当教科の先生が出勤できていない状態らしい。

Dクラスという言葉を聞いた途端にめぐちゃんが「サボる」と呟いた。

淳君も机に突っ伏して「俺も」と言う。

「2人とももっとはしゃごうよー。風野ちゃんは行くよね?ね?」

すぐ傍にいた猿渡さんが声をかけたけれど、2人はまったく反応する気配もなかった。


グラウンドへ行く途中で浅井君に声を掛けられた。

「淳とめぐは一緒じゃないの?」
「2人ともサボリだって」

私が答えると、浅井君は「そっかー」と明るく笑う。

井上君から昨日のことは聞かされていないのだろうか。

私がそんな疑問を思い浮かべた矢先、浅井君が思い出したように言った。

「そう言えば井上、今日休みなんだよね。メールしたら風邪って言ってたけど、インフルエンザじゃないといいな」

――昨日寒い中プールなんかで立ってたからじゃないのかな…。

私はそう思いながらも、浅井君に昨日のことを言うのはやめておいた。

「木山君は?」

私が訊ねると、浅井君は「普通に来てるよ」と答える。

その言葉に少しだけホッとした。

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