・*不器用な2人*・
第53章/手
それから数日経たないうちに淳君はクラスの女子から呼び出しを受けた。

中庭で何やら話している彼らを、クラスの女子たちが窓から覗き見ている。

「先越されちゃったかー……。私も淳君狙ってたのにー」

そんなことを言う女子たちを横目にめぐちゃんは心底つまらなさそうだった。

留年が決まった途端大人しくなった鈴木君たちもつまらなさそうに、騒ぐ女子たちを睨みつけていた。

その時だった。

教室後方の扉が開いて木山君が入って来た。

「風野さん、めぐ。
春休みに旅行に行こって話になってるんだど……。」

私たちにそう言いながら木山君はフッと窓の外を見て大きく顔を顰めた。

「……何、あれ」

彼はやけに冷え冷えとした不機嫌な声でそう呟く。

めぐちゃんが慌てたように木山君を見上げて、「ちょっと話してるだけだと思うよ!!」とフォローをする。

「旅行の話、風野さんから梶に話しておいてよ」

不機嫌な声のままそう言われ、私はゾッとしながら首を縦に振る。

「木山君も行くんだよね?」

めぐちゃんが緊張したように強張った声で言うと、木山君は面倒そうに髪を掻きながら首を横に振る。

「行きたくないし、行かない。
浅井に頼まれて伝えに来ただけだから、俺。
代わりに淳でも誘えば良いんじゃないの」

木山君の言葉にめぐちゃんが「何それ!」と大声で言った。

窓に群がっていた女子たちが驚いたように振り返り、鈴木君達が何事かと身を起こす。

「代わりなんてあるわけないでしょ!?
木山君の代用品にされる淳だって可哀想だし。
大体、木山君私がこの前言ったこと覚えてる?」

木山君は一瞬ムッとしたような表情を浮かべたものの、やがて潜めた声で言った。

「気分が乗らないんだって、それくらい察しろよブス」と。



追いかけたらまた以前みたいに酷いことを言われてしまいそうで、私は結局追いかけることができなかった。

梶君が手を引っ込めたように、私も木山君を追わなかった。

ただ、めぐちゃんは教室を勢いよく飛び出した。

「誰がブスだバカ!」

ドスのきいた声が廊下から教室にまで響き、またもクラスメートたちがギョッとする。

「私がブスだったら世の中の女全員ブスだっての!
てか木山!お前だって大した顔じゃねーんだから人のこと見下すのも大概にしろボケ!」

私も慌てて教室の扉から廊下へと顔を出す。

木山君はギョッとしたようにめぐちゃんを凝視していた。

「大した度胸もないくせに一々人に嫌われるような態度とるんじゃねー!
1人でいるのが嫌なクセにわざわざ人を突き放したりして意味が分からないんだよ!」

木山君は唖然としたまま廊下に立ちつくしていたが、やがて前髪を掻き上げた。

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