・*不器用な2人*・
「俺の家、全然裕福じゃない。
親も甘やかしてくれなかったし、厳しく躾けられたよ。
俺は情けないような高校生になったかもしれないけれど、皆が思うほど幸せには生きてこなかったと思う」

不意に木山君がそんなことを言った。

先程中西君に言われたことを真に受けてしまったのだろうか。

「むしろ幸せ太りしてる高校生の方がみっともないと思うし……」

木山君はそう言って口を噤んだ。

「でも、そういう子のことが羨ましかったんだよね」

私が言うと、彼はムッとした表情を浮かべながら頷いた。



集合場所へ戻ると前歯の折れた中西君が仏頂面で立っていて、木山君に嫌そうに頭を下げた。

「さっきはごめんなさい」

まるで誰かに言えと言われた台詞のように吐き捨てると、彼はサッサとバスへ乗りこんでしまった。

「謝ったら許してもらえるなんて、あいつの方こそ甘やかされて育ったんだろうね」

木山君は不機嫌な声でそう言うと、薄暗い顔のままバスへと入って行く。

私も慌ててその後を追った。

帰りのバスも行きと同じ座席だった。

初のクラス行事でいきなり暴力沙汰となってしまったことを担任はやけにグチグチと怒り、学校へ戻るまでのバスの中で2時間きっちり説教が続いた。

生徒のほとんどはイヤホンを耳に入れてその言葉を聞いていなかったものの、私の横に座っていためぐちゃんは鬱陶しそうに顔をしかめつつ「声がかれればいいのに」と呟いていた。


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