オレンジ


「え。もしかして、しょーへー、胸とか当たったの気にしたり?」


「なっ!ななっ!!」


「あたしたちの仲じゃん~。気にしてないっしょ」



こいつはほんとに。



「なぁ、俺もちゃんと男なんすけど」


「うん。そーだね」



えーりは俺を振り向きさえもしない。


えーりには、好きなひとがいるんだから。



俺じゃないんだから…。



そう思ったら、なぜだかちくっとした。


少しだけ、苦しくなった。



なぜなのか、心の中を捜しても理由は見つからなかった。




「しょーへー?」


えーりが俺の顔の前で手を上下に動かした。



えーりには好きな男がいる。


それは俺じゃない。


だったら、えーりは俺にこーゆうことをしてはいけない。



俺はちゃんとそのことをえーりに教えなきゃいけない。

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