オレンジ
目の前で振られた手をつかむと、
えーりはきょとんと俺を見つめてきた。
「えーり、俺に構うより好きなやつに行けよ。そのうち好きなひとに誤解されっぞ」
「…しょーへーって、本当に鈍感だよね」
何を言われるかと思えば。
そんな俺のことかよ。
「ほっとけ!」
「照れてるーっ」
えーりは写メを撮ろうとしている。
俺は撮らせまいと必死だ。
「撮らせてって」
「だからっ!」
俺はえーりの動きを止めた。
えーりの細い腕をつかんで、ソファの背もたれに押しつけた。
本当に、細い。
いつも俺んちで同じものを食べているのに。
「誤解を招くようなことはしたくない。えーりの好きなやつはえーりのこと好きなのかもしんないじゃんか」
「……誤解を招かないにはどうすればいいの?」