バーテンダー
「え? もしかしてサクランボ?」
「今日あたり採ろうと思っていたところで欲しいなら、持ってきな」
「いいんですか?」
「ああ。ちょっと待っててよ。サクランボを入れるザルを持って来てやるからね」
木になったサクランボを見るのは初めてだった。
おばあさんのお言葉に甘えて、彼とわたしは、サクランボの収穫に取り掛かった。
収穫しては、甘酸っぱいサクランボを口に頬張った。
手の届かない場所のサクランボは彼に任せて、初めての経験を楽しんだ。
サクランボ収穫に夢中になっていると、どこから聞きつけたのか、老人たち五人ほど集まって来た。
そして、彼に嫁が出来て良かったと大喜びしていた。
彼を変えたものが、この場所にあった。