バーテンダー

「え? もしかしてサクランボ?」


「今日あたり採ろうと思っていたところで欲しいなら、持ってきな」


「いいんですか?」


「ああ。ちょっと待っててよ。サクランボを入れるザルを持って来てやるからね」


木になったサクランボを見るのは初めてだった。


おばあさんのお言葉に甘えて、彼とわたしは、サクランボの収穫に取り掛かった。


収穫しては、甘酸っぱいサクランボを口に頬張った。


手の届かない場所のサクランボは彼に任せて、初めての経験を楽しんだ。


サクランボ収穫に夢中になっていると、どこから聞きつけたのか、老人たち五人ほど集まって来た。


そして、彼に嫁が出来て良かったと大喜びしていた。


彼を変えたものが、この場所にあった。
< 55 / 76 >

この作品をシェア

pagetop