キミの風を感じて

「あいつ、大丈夫なんだろうな? 立木紗百」


「うん」


軽くスルーして、俺は立木さんのほうへと目をやった。


今日は髪をふたつに結んだ彼女が、本荘やほかの女子たちの輪の中にちゃんと入っているのを確認して、なんだか少しホッとした。




昨日は……カッコ悪かったよな、俺。


泣きながら走り方を教えてくれたあの子の姿を、あれから何度も思い出していた。


同情なのか、驚いたのか

あんなふうに泣かせてしまうほどに、俺はヤバそうな雰囲気だったんだろうか……。



まぁ……


かもしれない。




吉崎が顧問をはずされるなんて話は、まったく知らなかった。あいつが陸部のみんなからそんなふうに慕われているなんてことも、全然。


吉崎のことを何となく気に入ってんのは、俺ぐらいのもんかと思ってた。


担当教科の数学はもってもらったことがないけれど、案外あいつはいい先生……なのかもしれない。


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