災厄の魔女

 「あぁ恐い。このままだと本気で殺されるかも」

ギルド長が居る観客席を睨みぼそりと呟くとリッカの腕を引き抱き寄せる。




 「て事で悪いが先に失礼するよ。さらばだ諸君!」


そう言うと彼は一枚のコインを親指で弾きあげる。


クルリと回転しながら宙を舞う。


全ての目がそれに集中する。


高々と舞った後、重力に従いステージの上に落下。


小刻みに揺れ動きを止めたそれを見つめる学生達はハッとする。



何時の間にか遙翔達3人の姿が其処から消えていたのだ。


コインに夢中になっている隙の出来事。


何処に行ったのか。
何が起きたのか。

学生達がざわめく中、1羽の黒蝶がステージ上を低空飛行する。




 「チッ……目障りな闇の遣いが……」


優雅に舞う黒蝶を目に舌打ちを打つ1人のギルド長。


苛立ちからか貧乏揺すりをし親指の爪を噛み砕く。




漆黒の羽をはためかせる黒蝶は舞い上がる。


一筋の光に向かって。


高く高く、どこまでも高く舞い上がった。






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