災厄の魔女

ふっと吹いた冷たい風が草木を揺らし葉を散らす。


空に昇る太陽は雲一つ寄せ付けず、何ら変わり無く町を照らし続ける。




まばたきをした一瞬の隙に変化した目の前の景色。


目前に広がるのは見覚えの無い賑やかな町並み。


学園のホールに居た筈の遙翔はその変化に驚き一歩後退ると背後に居た人物と身をぶつけた。




 「すみま――うぐっ!」


振り向きざまに謝るが言葉を詰まらせる。

と言うのも、相手に首を掴まれてしまったからだ。


身をぶつけた人物、要はギロリと鋭い瞳を向けるが、相手が遙翔だと分かるとその瞳を和らげる。




 「あぁ悪い。何処かで雇われた殺し屋かと思った」


雇われたって何だよ!
殺し屋って誰だよ!
てか命狙われてるのかよ!


心の中独りつっこむ遙翔はそんな自分に苦笑する。




 「言っておくが、俺は――」


 「あぁ、話は後々。何時も使わない神経使ったから、ハァ…疲れてるんだよね」


欠伸をしながら言う要はリッカを連れて歩いて行く。


また流された。
またはぐらかされた。


2人の後ろ姿を見つめる遙翔は肩を落とす。




 「大丈夫。心配いらないよ遙翔くん」


 「?」


 「俺達のギルドにはそんな大それた仕事は回ってこないからさ」


遙翔の心を詠んだように言う要。


悪戯な笑みを向けられた遙翔は何とも言えぬ不快な気分になるのだった。





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