闇夜に真紅の薔薇の咲く
†序章†
ゆっくりと意識が浮上する。
水面に水滴が落ちる音が耳朶をうち、少女はゆっくりと目を開けた。
「……?」
視界を覆うのは全て闇。
屋内にいるのか、屋外にいるのかすら分からない。
少女は横たわっていた身体の上半身をおこし、あたりを見回し首をかしげた。
ここはどこなのだろうか。
自分は先ほど、ベッドにもぐりこんで眠りについたはず。
目が覚めるにしても、これほどまでに何も見えないと言うことはない。
せいぜい少し視界が悪いだけで、部屋に置いてある家具などは容易に見える。
ならば、これは夢なのか。
少女は眉をひそめると、とりあえず立ちあがって闇に目が慣れるまで待つ。
どこなのかも分からない場所で、不用意に歩くのは得策ではない。例えそれが夢であっても、だ。
しばらくその場でジッとしていると、闇に目が慣れて目の前にかざした手がぼんやりと見えるようになり、彼女は一歩足を踏み出した。
彼女が見える限りで、家具などはどこにも見当たらない。
一瞬、屋外かという考えが頭をよぎり僅かに首を振る。
家を出た記憶も無ければ、目的も無い。
彼女が就寝したのは夜の十時半。
学生が出かけるには遅すぎる時間だ。
ましてや、闇があまり好きではない彼女はよほどのことがない限り外に出歩かない。
というか、記憶も無く家を出たとなればそれはもう病気の域を達してしまっている。
彼女は苦い表情を作ると視線を正面から逸らし、ふぅと嘆息して歩みを進めた。
闇が苦手な彼女にとってこの濃密なまでの闇は不思議と怖くはない。
水面に水滴が落ちる音が耳朶をうち、少女はゆっくりと目を開けた。
「……?」
視界を覆うのは全て闇。
屋内にいるのか、屋外にいるのかすら分からない。
少女は横たわっていた身体の上半身をおこし、あたりを見回し首をかしげた。
ここはどこなのだろうか。
自分は先ほど、ベッドにもぐりこんで眠りについたはず。
目が覚めるにしても、これほどまでに何も見えないと言うことはない。
せいぜい少し視界が悪いだけで、部屋に置いてある家具などは容易に見える。
ならば、これは夢なのか。
少女は眉をひそめると、とりあえず立ちあがって闇に目が慣れるまで待つ。
どこなのかも分からない場所で、不用意に歩くのは得策ではない。例えそれが夢であっても、だ。
しばらくその場でジッとしていると、闇に目が慣れて目の前にかざした手がぼんやりと見えるようになり、彼女は一歩足を踏み出した。
彼女が見える限りで、家具などはどこにも見当たらない。
一瞬、屋外かという考えが頭をよぎり僅かに首を振る。
家を出た記憶も無ければ、目的も無い。
彼女が就寝したのは夜の十時半。
学生が出かけるには遅すぎる時間だ。
ましてや、闇があまり好きではない彼女はよほどのことがない限り外に出歩かない。
というか、記憶も無く家を出たとなればそれはもう病気の域を達してしまっている。
彼女は苦い表情を作ると視線を正面から逸らし、ふぅと嘆息して歩みを進めた。
闇が苦手な彼女にとってこの濃密なまでの闇は不思議と怖くはない。
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