僕が君にできること
「やっぱり…夢だったんだよね。」


あまりに違う世界だ。


片や着飾り彩られたステージで世の中が皆注目する場所にいて、もう片方はTシャツに短パン湯上りに缶ビールを片手にテレビに向かう。


潜在意識から見た自分勝手な夢のせいで、目覚めた後も夢に出てきた人がしばらく気になってしょうがなくなる…。


そんな夢に違いない。


メガネをかけ戯けた表情から一瞬にして鋭い表情に変わり、ステージ上を自由自在に動き回るテテ。ライトに映し出される彼は漫画の世界の人のようにも思えた。


不意に見せる子犬のような表情に胸が苦しくなった。

私の知っているこの人はこんなにかっこよくなんてない。ボサボサで抱きしめてくれる人を求める従順な子犬のような人だ。
私のそばで安心して寝息をたてる寂しがり屋の子犬なんだ。



…そう。



子犬のようなテテだけを見つめていれば良かったんだ。
テテも…私にそれを求めていたんだ。



流れる涙に気がついた。
私があの人をあそこにまた追い返しちゃったんだ。


流れる涙を腕で拭った。
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