僕が君にできること
「ハイ!カットー!」


緊迫した現場が解放された。


抱き寄せた手を解き現実に戻る。


…その繰り返し。でもそのお陰で現実から目を背けることができた。


その細切れの時間があるから感情を押し殺すことができた。


目の前の相手を愛してるそう思わせて朋を忘れようとしていた。



「湯川くん疲れてるね」


モニターを覗く背後からする声に振り向くと南柚木がいた。


この撮影で何度も抱き合いそしてキスを交わした。



「あっ…ロケが続いて疲れたかな」


取り繕う笑顔は自分でもわかるくらいぎこちない。


「湯川くん忙しいもんね。この後少し時間が空くから休まない?」


四国 高知を舞台にした撮影のため東京を行ったり来たりしながら、もう1ヶ月ほどこの地での撮影を繰り返していた。


四万十川の流れを見下ろしながら沈下橋の上に足を投げ出し座った。
日差しは柔らかく降り注ぎ時より触れてくる風はまだ冷たさを残していた。
川と寄り添うように広がる緑は新しい葉を広げ、日差しをうけ眩しく光を放っていた。


「綺麗だよね…この景色」頭上から聞こえる声に見上げると柚木が烏龍茶を差し出して隣に座った。






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