僕が君にできること
「湯川くんとは仕事で何度かあってたけど何か変わったね」


柚木が飲むdietペプシは僕の中の治らない傷を疼かせた。


「前から思っていたんだ、湯川くんってどこか寂しそうだよね。なんか壊れそう」


柚木の横顔を感じながら川の流れを見つめた。


「ハハハッ僕ってそんな風に見えるんだ。相当まいってるってことだよね」


確信をつかれていることを誤魔化すけどわざとらしい。


「こういう世界って…時々見失いそうになるよね…自分を」


まるで全て見透かされているみたいで、その横顔を振り返り見つめた。


「本当の自分はこんなんじゃないのに幻想の自分が独り歩きして、本当の自分は置いてきぼりで、自分は誰なんだろうって。感じることない?」


その寂しい思いを埋めてくれたのが朋だった。


見失いそうな僕を見つめてくれたのが朋だった。


でもそれを幻想の僕が許さなかったんだ。


幻想の僕が朋を傷つけていた。


膿んで治らない傷が痛む。


「ねぇ。私たちおんなじだね」


まっすぐ見つめてきた柚木の唇が触れた。









< 40 / 54 >

この作品をシェア

pagetop