ダブルスウィッチ
目が覚めたとき、えみりは違和感を覚えた。
安っぽいソファーベッドとは違うフカフカな布団の感触。
それだけじゃない、横向きに眠っていたえみりの顔にかかる髪の色は黒だ。
おまけにいつもなら胸のあたりまである髪が、絡まったりするのだけれど、どうみてもその黒髪は短い。
えみりは二度瞬きをしてから、自分のものだろう手のひらを見つめた。
グーとパーを繰り返し感覚を確かめる。
やはり自分の意思で手は動いていた。
だけど……とえみりは思う。
つい先日やってもらったばかりのネイルが、ない。
短く切り揃えられた、肌色の健康そうな爪が覗いている。
えみりはもう一度、目をギュッと瞑った。
(うそ!なにこれ?)
昨日の昼、亮介の妻に会ったことは覚えてる。
そこで入れ替われるという薬を二人で一緒に飲んだことも。
あまりにもバカげた行為だったけれど、亮介の妻があまりにも真剣で、つい信じてみようかという気になったのだ。
けれどその結果、何も変わらなかった。
薬のせいで体調が悪くなることもなかったし、もちろん入れ替わることなどなかった。