ダブルスウィッチ



目が覚めたとき、えみりは違和感を覚えた。


安っぽいソファーベッドとは違うフカフカな布団の感触。


それだけじゃない、横向きに眠っていたえみりの顔にかかる髪の色は黒だ。


おまけにいつもなら胸のあたりまである髪が、絡まったりするのだけれど、どうみてもその黒髪は短い。


えみりは二度瞬きをしてから、自分のものだろう手のひらを見つめた。


グーとパーを繰り返し感覚を確かめる。


やはり自分の意思で手は動いていた。


だけど……とえみりは思う。


つい先日やってもらったばかりのネイルが、ない。


短く切り揃えられた、肌色の健康そうな爪が覗いている。


えみりはもう一度、目をギュッと瞑った。


(うそ!なにこれ?)


昨日の昼、亮介の妻に会ったことは覚えてる。


そこで入れ替われるという薬を二人で一緒に飲んだことも。


あまりにもバカげた行為だったけれど、亮介の妻があまりにも真剣で、つい信じてみようかという気になったのだ。


けれどその結果、何も変わらなかった。


薬のせいで体調が悪くなることもなかったし、もちろん入れ替わることなどなかった。


< 100 / 273 >

この作品をシェア

pagetop