ダブルスウィッチ
そして唯一納得できなかった条件。


それは子供は作らないというものだった。


条件を呑むことを決めたとき、いつか彼の気持ちも変わるかもしれない、子供が欲しいと思うときが来るかもしれない、そんな思いもなかったとは言えない。


だから彩子はその時はしがみついたのだ。


条件のいい結婚というものに……


けれど日本に戻り幾年が過ぎても、彼の気持ちが変わることはなかった。


それどころか40歳になったとき、子供が欲しいと訴えたら、彼はあの誓約書を黙って彩子の前に置いて立ち去った。


そしてもともと淡白だった彼は、それを境にもう彩子を抱くことはなかった。


彩子が納得していると思っていたときは出来たものが、そうじゃないとわかった瞬間出来なくなったのかもしれない。


唯一、彼と繋がっているときが、愛されていると実感出来るときだったのに、それも失ってしまったのだ。


それでも毎日毎日、家事をして落ち着かない部屋で過ごさなくちゃならない。


一人ぼっちで華美な家具やインテリアに囲まれて……


空しさが彩子を襲った。


この先、誰にも抱かれないまま、一生を過ごすのかと思うと悲しくなる。

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