ダブルスウィッチ
電車の揺れに任せて、彩子はドアの側にもたれていた。
まだ気だるい身体をもて余しながら、ため息をつく。
亮介のセックスは、彩子のそれとは全く違っていた。
求め、求められ、繋がる悦びは、彩子にはなかったものだ。
それを他人の体で味わうなんて……と、彩子は自分が浅ましく思えて唇を噛んだ。
亮介は優しかった。
触れる指先も、囁く声も……
えみり……と愛しそうに呼ぶ亮介の声に、何度叫びだしそうになったかわからない。
彩子と、呼ばれたのはいつだったろう?と彩子は思う。
自分の名前をあんな風に呼ばれたことはあっただろうか?と。
それなのに、彩子はえみりの身体で何度も絶頂を迎えていた。
今までに出したこともない矯声をあげながら……
『えみり……声、我慢しないで?
いつもみたいな声を聞かせてくれ』
そう囁かれて彩子は喉を詰まらせた。
彩子はいつも声を押し殺し、自分だけが感じていると知られたくなくて、ただただ亮介が終わるのを待つだけだったことを思い出す。
途中で萎えたと冷めた目で彩子を見下ろし、さっさとシャワーを浴びに行ってしまうような……そんなセックス。