ダブルスウィッチ
「亮介さん、今夜も遅くなるの?」
朝食を食べ終えて、ソファーで新聞を読んでる亮介に、彩子はそう声をかけた。
無言電話がかかってくるようになって、気づいたことがある。
以前よりも帰りが遅いことが増えた。
それも一度や二度じゃない。
ずっとそれは仕事なんだと、彩子は呑気にも思っていた。
けれど違うのかもしれないと思うほどに、無言電話は執拗だった。
彩子が切るまで向こうはずっと息を潜めてる。
三ヶ月間、毎日となると彩子を追い詰めるには充分な時間だった。
目的はなんなのだろう?と彩子は思う。
嫌がらせにしては、規則正しくて、もし彩子がその時間に家にいなければわからないものだ。
自分より大きなダイヤをプレゼントされたのは、どんな女性なのか興味があった。
あの淡白な亮介が、彩子以外にはどんな顔を見せるんだろう?とも思う。
浮気をするほどセックスが好きなようには思えなかったし、仕事第一の彼がそんな危ない綱渡りをするだろうか?という疑念もなくはなかった。
仕事のために、よく知りもしない女と条件だけで結婚するような男だ。