ダブルスウィッチ
でもそれは自分で望んだこと。


めんどくさいのは嫌だと、一番最初に釘をさされてる。


だからあの可愛らしい声をした妻の元に帰るのは仕方のないことだと、えみりはそっとため息をついた。


彼の仕事が終わってからの時間は、いつも短い。


たっぷりと愛してはくれるけれど、その分会話をする時間は少なかった。


それでも少しだけ寄り添って眠れる時間は、えみりの一番好きな時間でもある。


それさえ奪われて、おまけに来週まで会えないなと思うと、無性に寂しくなった。


自分の立場はわかってるつもりだ。


それでもいいからと懇願したのはえみりで、だから彼は何も悪くない。


悪いのは、どんどん欲張りになっていくえみりの方だった。


ちょっとしたことで奥さんのことがちらつくのは、あのクリスマスプレゼントのせい。


勝手に奥さんとはうまくいってないんじゃないかとえみりは思っていたのだ。


だけどなにか離婚できない理由があるんだと……


奥さんともしてるのかと思うと、平静ではいられなくなる。
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