ダブルスウィッチ
専門学校を出てからずっと派遣に拘っているのには理由がある。


動きやすいし辞めやすい。


その一点だった。


3ヶ月毎に更新される雇用も、逆にいえばこちらから切ることもできるわけで……


そこがえみりにとって都合が良かったのだ。


本業とまではいかないものの、えみりは歌手を目指していた。


音楽の専門学校を出て、事務所に入って細々と活動しているそれは、たまに忙しくなることがある。


そんなときすぐ対応出来ることから、このスタイルが身に付いた。


亮介にも一度聞いてもらったことがある。


『素敵な歌声だね?

えみりの声は全部知ってると思ってたけど、こんな声も出せるんだな?』


そう言って彼は私を抱いた。


えみりの切なくあげる声を楽しむかのように……


ペロリと唾液を拭いながら『えみりのその声もたまらない』と妖しい笑みを浮かべる。


歌うたびにそのことが思い出されて、体が疼くのがわかった。


そのせいだろうか?


最近はえみりの声に色気が増したと評判がいい。


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