ダブルスウィッチ
えみりが息を呑むのがわかった。


彩子の本気をわかってくれたのかもしれない。


「でも……」


いまだ躊躇する理由は、もう薬に対してのものじゃないはずだ。


きっと自分が年老いた姿になるのに戸惑ってる。


だからあえて言わなかった。


彩子と亮介の関係を、普通の夫婦だと思っているえみりを、そこだけは騙してる。


「3ヶ月……」


「え?」


「期限は3ヶ月でどう?」


えみりの瞳が揺れたように見えた。


あとひと押しで落ちるかもしれない。


「そこに2つカプセルが入ってるでしょう?

それは元に戻るための分なの

期限が決められてるなら、あなたにとっても悪い話じゃないはずよ?」


えみりは彩子の言葉をジッと聞いていた。


それからゆっくりと彩子の手を避けると、自分の手に握らされたカプセルの袋をそっと開いてみる。


「3ヶ月……でいいんですね?」


顔を上げたえみりは、なにかを決意したような強い表情をしていた。


「もちろん!

それでまだあなたがそのままいたいなら続けてもいいし、嫌なら戻ればいいから」


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