キスの意味を知った日

「それより大丈夫? 風邪?」


余程辛そうな顔をしていたのか、酷く心配した様子で私の顔を覗き込んできた梨恵。

そんな姿を見て、頑張って頬をクイッと上げて、大丈夫。と言っておいた。

誰に対しても弱みを見せない所は、私の可愛くない所だろうな……。


それから、お互いの近況について話に花が咲いた。

今度、久しぶりに美咲と3人で集まろうだとか。

同期の誰が結婚しただとか。

そんな事を喋っていると――。


「あ、櫻井さん」


突然の梨恵の声で肩が上がる。

声に従って後ろを振り返ると、少し離れた所に名前の主がこっちに歩み寄ってきているのが見えた。


「お久しぶりです! 櫻井さん!」

「久しぶりだな。そっちはどう?」

「櫻井さんが抜けて、毎日が戦争ですよ」


私達の元まで歩み寄ってきた櫻井さんに、梨恵が楽しそうに話しかける。

そして、それに応えるように櫻井さんも和やかに話し出した。


さすが今までの部下と上司。

話し方がフランクだ。

きっと、お互い仕事上では深い信頼関係にあったんだろう。
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