地方見聞録~人魚伝説譚~
エノヒ様のもとで食事を頂いたあと、ひっそりと一人村を出る。
途中まで気をつかったウルドが同行してくれ、別れるさいには「気をつけろよ」と言い聞かせられた。しかも、くしゃりと頭を撫でて。
幼い頃から知る父のような存在は頼もしかった。
空には月が上がっていた。
海辺の小屋を覗く。誰もいない。彼は先に行ったのか?――――ふと過ぎったのは、ヨウが海へ帰ってしまうことだ。
留まるとは言っていたが、いつ戻るかわからない。遠い場から連れてこられたとは言っていたが……。
ヨウを助けた岩場を進む。