地方見聞録~人魚伝説譚~





 こうしていると、普通のヒトにしか見えない。だが彼は"人魚"だ。
 陸で生活出来るとはいえ、やはり海へ戻る必要があった。





「ねえ、そういえば」

「うん?」




 私は小声で聞いてみる。




「海では、服ってどうしているの?」




 下半身は問題ないだろう。
 やはり裸?男性ならいいけど……。

 ささいな疑問であるが、ヨウは面倒くさがらずに答える。




「男は装飾品くらいだな。女性は着ている。胸のあたりを覆うような」

「へぇ……」

「衣服に関しては、人間のほうが豊かかも知れぬな」





 ふっと笑ったヨウに、私は思わず魅入ってしまった。





  * * *





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