地方見聞録~人魚伝説譚~







 その昔、私の先祖が人間の青年と恋をし、夫婦となった。だが、心ない者が人魚を捕らえようとした。

 青年は人魚を救うかわりに命を落とす。乙女はひどく嘆き悲しんだ―――――。




 ――――だからだろう。




 海へ入ったとき、あまり良い心地はしなかった。

 胸の奥が疼くような、切なく苦しい痛み。

 そんな痛みは青年の村を未だに守っている。彼女が残した珠玉が。






「ヨウ?」





 見上げるようにこちらを見ているレトに、我に返り「すまない、聞いていなかった」と言えば嬉しそうな声。






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