地方見聞録~人魚伝説譚~
「セイン!」
兄であるオルハとて、刃で傷を負ったらしく、出血したままだ。
すぐそばに父であるウルドが睨みつける。
賊の数が多い――――。
「お、お頭」
賊の一人がそう声を発した「――――レト!」
エノヒや他の村人の目にうつったのはレトだった。そしてつい最近商人としてやってきたはずの男、ヘズとブラギであったことに誰もが目を見開いた。
下調べをし、先に入り込んでいたか。
しがみつく小さな子供を感じながら、エノヒは男たちをしっかり見据える。その姿は少しも若者や賊に臆していない。