地方見聞録~人魚伝説譚~




「今回はしくじらなかったようだな」

「お頭に良い話があります」



 ぐったりとして動かないレトを見て、リンが暴れた。だが容易く男に押さえ付けられ、ゲラゲラと笑う声が響いた。
 レトを抱えてきた男の一人、ヘズがにやりと笑う。




「"先日逃がした男"と繋がりを持つ女です」

「先日……ああ、だが何故奴だとわかる?」

「これです」




 レトの胸元へヘズは手を伸ばす。その手には紐。そして―――高値がつくであろう珠玉。頭であるゼクトは、それがそんじゃそこらのものと違うことくらいすぐわかった「成る程な」



「この女をエサに呼び寄せるつもりか――――いいだろう。てめぇに任せる。まあ来なくても売っぱらえば金が入るしな」




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