地方見聞録~人魚伝説譚~
ゼクトが笑った。
「この女二人は貰ってく」
「てめぇ……」
「黙っておれ!――――宝玉は渡す。お前さんらは先に見張り以外引き上げて貰おう。村の者は縛られておるし、私などは問題なかろう?」
セインを黙らせそう言ったエノヒの言葉に、ゼクトはしばし考える。
己の目的は何も"無駄な殺し"ではない。
殺しにしろ何にしろ、ゼクトは早くここから離れたかった。そう、何だか嫌な感じがするのだ。それは長年の勘とも言えよう。
ブラギでもあるまいに、と口を曲げる。そして答えた。
「いいだろう――――」
* * *