地方見聞録~人魚伝説譚~



 ゼクトの下衆めいた笑みをにリンはふるえた。
 男達は村人を縄で縛っていく。子供たちもだ。男達に担ぎ込まれていく。セインが再び「リン!レト!」と声を発したが、男に殴られる。それを庇うオルハは睨むが、男は笑みを浮かべるだけ。




「さて。俺は別に全員殺してやってもいっこうに構わねぇ。女も別の使い道がある」

「……」

「そこで取引だ。この村にある宝玉を出せ。そしたら殺しはしねえ」

「信じられるものか!」




 村人の一人がそう憎々しげに発した言葉に、エノヒは悩んだ。
 ウルドが今縄をとく隙を窺っているだろう。しかし武器を持たぬ状態では不利だ。レトやリンも、そして村の者を守る義務がある。
 エノヒは己の息子であるウルドも同じことを考えているであろうことを信じた。




「他は」




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