Fairy And Rose
フリージアは花畑にある、黄色いパンジーの上でハンターを待つ。
勝算はない。
ならば、潔くここで仲間の花々と一緒になってやろう。
フリージアはそう思っていた。
「……」
ハンターが森の中枢まで…花畑まで来る。
分厚い眼鏡の奥にある目が、フリージアを見つけるとニッタリとした気持ちの悪い笑みが浮かんだ。
「おや、もう会えないと思いましたよ!
私と来る気になったのですか?
そうでしたら、嬉しい限りだ」
「いいえ、違うわ」
フリージアはとっておきのニッコリ笑顔でハンターを見つめれば、自分の中の力で体を大きくした。
サイズは人間サイズへとみるみる大きくなり、力を消費する。
「ほぉほぉ!そんな事まで…。
中はどうなっているのでしょう、急速な細胞分裂の賜物かあるいは…」
小さな声でブツブツと喋り出すハンター。
その天才的な頭脳をフル回転させて、フリージアを分析している。
「あー、早くどうなっているのか知りたい!
さぁ一緒に参りましょう、中を捌いてあげましょう!」
「前にも言った通り、お断りよ。
貴方みたいにイかれた人間と一緒なんて…嫌だわ」
「それにしても、なんて美しさだ!顔を切り刻むのは勿体無い、そうだ顔はそのままでも十分に高額で売れますね!
ええ、そうです!そうしましょう」
フリージアに近づき顔を寄せたハンターは、うっとりとした表情でそう言った。
そんなハンターにフリージアは苛立ちを隠せなかった。
フリージアの話しを完全に無視し、何処か酔っ払った姿が気持ち悪いことこのうえない。
「近寄らないで、貴方みたいな人間に触られたら腐りそう」
「皮肉な言葉も今だけですよ、大丈夫。何も怖がる事は無いのです!
さぁ、行きましょう!きっとバラバラになった貴女はさぞ素敵でしょう!」
ハンターはフリージアの腕を引っ張り、引きずる。
言葉では大切な商品だ!と高笑いしながら。
しかし、それもあと少し。
フリージアは一気に力を使った事で、すでにギリギリの状態。
生花になるのも時間の問題だった。