Sion




前を見ると、律花は隣の席の人と話をしていた。
だけど、律花は希愛を心配そうにちらちら視線を動かしていた。




そんな律花の視線に気づいたのか、隣に座っていた人が後ろを振り返る。
とても綺麗な漆黒の瞳が希愛を見つめる。




「巴さんの友達?」




とても人懐っこい笑みと優しげな口調で希愛を見る。
希愛は戸惑いながらも、コクりと頷いた。




律花が希愛を紹介する。




「花澤 希愛だよ」




「花澤 希愛さんか…珍しい名前だね、のえって」




昔からよく言われた。
希愛と書いて『のえ』と読む。
とても珍しく、知り合った人に必ずと言っていいほどそう言われた。
希は希望や望みを。愛は愛すること、愛されることを表しているそうだ。




「だけど、君によく似合ってる」




希愛はキョトンと目を丸めた。
律花はキッとその男の子を睨む。




「ちょっと!希愛を口説かないで」




「口説いてるつもりはないよ、本心」




とても不思議な人だと感じだ。
希愛の周りにはいない、性格の持ち主だ。




「希愛、こんな人に関わっちゃダメ」




「巴さん、そんなこと言わないでくれよ」




そして、律花にこんなにも親しんでいる人は初めていた。
律花はたまに誰にも寄せ付けない、強さを見せることがあった。
嫌いな人は嫌い、好きな人は好きといった区別もはっきりしていた。





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