Sion

音楽室





希愛は特別棟へとゆっくりと歩みを進める。
すると、綺麗なメロディーがゆらりと辺りに流れる。




この繊細で綺麗なメロディーに聞き覚えがあった。
入学式の日。那由汰に連れられてやってきた。
そのとき、那由汰はピアノを弾いてくれた。




『これは…あんたの曲』
そう言った那由汰の真っ直ぐな瞳を希愛は今でも思い出す。
とても力強い、真っ直ぐ心を見つめる目。




ピアノを弾く那由汰はまるで絵画を見ているかのように綺麗だった。
その指から紡がれる音は希愛の心に響き、揺さぶった。




あの瞬間からかもしれないと希愛は思う。
人と距離を置いていた自分が居なくなったのは…




今でもまだ人の視線は怖い。
だが、律花、湖季そして那由汰が支えてくれる。




この三人の存在は確かに希愛に安らぎを与えてくれていた。





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