白夜
周りの客も知らぬ間に残り二名になっていた。
もう肝狩りまで三十分もなくなっていたのだ。
龍桜は2杯目の焼酎をグラスに注ぎながら答えた。
「ぴんぴんよ、剛力のとこのおじぃちゃん。でも肝狩りだから店は閉めているんじゃないの?」
肝狩りの夜は城下の人々は、身を隠すため、店等は全て閉めるのである。
龍はうっかりしたと言う表情でグラスの縁を軽く噛んでいた。
少し見えた八重歯が狼によく似ている。
「そうか、じゃあ、俺はあの部屋で寝てなきゃならんわけだな。」
そう言ってグラスを傾けた。
そう、あの誇りまみれの部屋のある方に、だ。
「別にいいわよ。」
そう龍桜が言いドアを閉めようと拭いていたワインボトルをカウンターに置いた。
「・・・・・・わーぷ」
龍はドアの中にいた。
「また妖術?」
「あぁ、」
龍桜と龍は狐族とはまた一風変わった、“牙族"。
牙族ゎ代々の総長がおり、その初代総長が龍と龍桜の先祖、獣之大蛇(けもののたいしゃ)である。
そしてこの大蛇は奇妙な妖術を操れたのであり、その血が龍と龍桜にも少しばかり入っていたのだ。
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