桜の木の下で
そんな事を考えていると入学式開始を知らせるアナウンスが流れてきたので母と共に体育館に向かおうと歩き始めたその時だった。
― 一目惚れをした ―

ふと目をやった一本の桜の木の下にその男子は立っていた。

日本人離れしたスタイル、スラッと細身の身体の上に小さな頭。
透明感のある白い肌。
綺麗な目に高く先がツンと尖った鼻がとてもバランスが良い。

― 時が止まった ―


「律!ほら律!」
母の声により現実に引き戻された。
「なにボーっとしてんのよ!こんなとこに突っ立ってたら皆の邪魔になるでしょ、早く行くわよ」
私はよっぽどその男子に見入ってしまって周りが見えなくなっていたらしい。
私達親子と同じく体育館へ向かう人々が邪魔だと言わんばかりの目で私を見ながら通りすぎて行く。
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