メインクーンはじゃがいもですか?
「ちょっとちびっただろ」
ウエットティッシュを差し出すあたり、本当に男が出来ていない。
「なにそれ」
葵は差し出されたウエットティッシュを叩き落とし、口元を手で拭った。
「これが万馬だな」
「すっごい」
「これが俺の実力よ」
なんの実力だか分かったもんじゃないけれど、霧吹はすこぶるご機嫌だ。
葵はこめかみ辺りを痒くもないのに掻き、頭の中で踊っている8930万という数字を捕まえるのに必死だった。
「よし、まずは換金しに行って、それからメシに行くか」
ニコッと笑った霧吹はやはり素敵なお顔だが、赤ペンを耳の後ろに滑り込ませ、競馬新聞片手に競馬場にいることを想像すると、知らないうちに葵の眉間に三本の線が入った。
その皺は深く、葵は無意識のうちにその皺を伸ばそうと、こめかみに力を入れていた。