契約彼氏-ニセ彼氏-

「早紀ちゃん?」
不意に呼ばれて現実に引き戻された。

目の前には背の高い人影が立っている。

細身のパンツに革ジャケット。

ゴールドのブレスがちょっと水っぽい。

そしてこの手だ。

細くて節ばった大きな手。

「早紀ちゃん……だよね?」

和樹は少し困ったように再び名を呼ぶ。

本当の名前にしとけば良かったなんて、私はぼんやりと考えていた。

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