契約彼氏-ニセ彼氏-
「ねぇ、和樹は他の人とは、どんなデートしてんの?」
「んー、色々。ドライブとか、買い物とか、上京した親の前でカレシの振り……なんてのもあったかな」
「あの『摩耶』って人とは?」
私が聞くと、コーヒーカップを持つ和樹の手が一瞬止まった。
やがてコーヒーを口に含むと、そつない笑顔を向けてくる。
「まぁ、人は人だから。早紀ちゃんは自分がやりたいコトをしたらいいよ」
なによ、カッコつけちゃって。私はムカついて和樹のマルボロに手を延ばす。
「ちょうだい?」と言うと1本くわえた。
「火、点けてよ」
私は挑むように和樹を見つめる。
「あんたはホストでしょう。金で買われた男なんでしょう?」
そのことを和樹に思い知らせてやりたかった、女たちの前で。