愛色と哀色の夜
「自信がないあんたなんてあんたじゃないわ」
悪戯っぽい顔で杏さんは笑うと、ボクと麗菓さんを見て
「…ごめんなさいね、この人無計画だからふたりを住まわせる家を探してなかったみたいなの…」
家、麗菓さんは尋ねるとルイさんを見詰めます。
「流石に、このままずっと歩き続ける訳にはいかないでしょ?だから適当な家を探していたんだ」
言うまでもなく麗奈ちゃんは孤児で麗菓ちゃんは家出した訳だし、ルイさんは言うと軽く息を吐きました。
「…ふたりが眠っている間に家を探して、一応見付けたんだけど、……ふたりとも、別々の場処に行くことになっても大丈夫かい?」
一瞬、何を言っているのかよくわからなくなりました。
「家に行く」ということは育ててくれたお婆さんから聞いたことがあるのでなんとなくわかるのですが、「別々」という意味がわかりません。
そのことを言うとルイさんはボクを見て
「麗奈ちゃんは、麗菓ちゃんと離れても大丈夫?」
ボクは今まで、誰かと「離れた」ことがないのでよくわかりません。
首を傾げていると、麗菓さんがわかるように説明してくれました。
「離れるというのは、わたしと麗奈が会えなくなるということですよ」
麗菓さんと会えなくなる、それを聞いてボクは首を横に振りました。
「ボク、麗菓さんと会えなくなるのは嫌だ…」
「…嗚呼、説明してなかったけど『完全に』会えなくなる訳じゃないよ?」
その言葉に、麗菓さんは顔を上げます。ルイさんはにこっと笑うと
「ふたりが行く家はそんなに……離れてないから、いつでも行けるよ」
麗菓さんはその言葉に、安心したような息を漏らしました。
「…まぁ、いきなり言われても困るでしょう。この時間は誰もいないから、ふたりで話し合っていらっしゃい?」
杏さんは言うと、寂しそうに微笑み交互にボク達を抱き締めました。